ほんの気紛れに、手を差し伸べないで下さい。
中途半端な優しさは、却って辛いだけだから。
人に慣れず、眼前の手に爪を立て、毛を逆立てて牙を剥く。
そんな私を、抱き寄せたりしないで下さい。
貴方の優しさも、温もりも、全てその場限りの戯れならば、却って寂しさが募るだけだから。
端から持たぬ物ならば、不足感に苛まれる事も無いのに。
望みもしない愛を惜しみなく与えて、充足感に浸る贅沢を教えて。
その上で全てを奪うなんて、そんな残酷な事をしないで下さい。
喪失感に打ち拉がれて、二度と立ち上がれなくなるから。
丸ごと受け止める気も無いくせに、その胸に包み込んで。
後で突き放す積もりなら、最初から構わないで下さい。
何気ない素振りで近付いて、離れれば追い、擦り寄ればまた突き放して。
遊びの相手が欲しいなら、他を探して下さい。
貴方にはただの暇潰しでも、私は本気になってしまうから。
ほんの気紛れに、愛をばら撒かないで下さい。
一時凌ぎの温もりは、却って心が冷えるだけだから。
お願い、貴方…。